無名鬼日録

読書にまつわる話を中心に、時事的な話題や身辺雑記など。

母の「おぼえがき」その3

母の「おぼえがき」(その三、昭和二十一年) 昭和二十一年一月一日 午前三時、お祝すませて床につく 連日の疲れでぐっすり八時迄寝ル、 赤飯、人蕁、ごぼう、ごまめ、じゃがいも、 小芋、えんどう豆、高野豆腐、かずのこ、こんにゃく 一日は殿辻の春本へ行…

母の「おぼえがき」その2

母の「おぼえがき」(その二、昭和十九〜二十年) 昭和十九年一月一日 鯛、えんどの甘煮、かづの子、じゃがいも、ごんぼ、 高野どうふ、れんこん、ちくわ、にんじん、ごまめ、 にしん、ぞうに(もち入)、赤飯 午後玉川町行、ぜんざい(とても甘い)浩一(げ…

母の「おぼえがき」その1

私の母は昭和二年十月二十六日大阪市住吉区(現・住之江区)長狭町に、理髪業を営む馬野政一・政江の長女として生まれた。その店舗付き住宅は阪堺電車の線路に面し、住吉大社の鳥居前に建ち並ぶ家並みの一画にあった。政江は二年後に長男浩一を産むと病没し、…

森田童子の死

森田童子が亡くなった。 二〇十八年四月二十四日、享年六十五歳。 彼女のベストワンは何かと問われれば、 私はやはり「ラスト・ワルツ」をあげる。 「ラスト・ワルツ」 美しき明日に ついても語れず ただあなたと しばし この時よ すべてが なつかしき この…

『エヴリシング・フロウズ』

六十年代までのジャズならともかく、音楽に疎い私には縁遠いものだが、ロック音楽の世界には、オルタナティブ・ロックというジャンルがあるらしい。「エヴリシング・フロウズ」という曲は、そのオルタナ・ロックバンドであるティーンエイジ・ファンクラブが…

詩集『北山十八間戸』

荒川洋治の新詩集『北山十八間戸』が気争社から上梓された。平成二十一年(2009)の『実視連星』以来、七年ぶりの詩集となる。平成二十二年(2010)の発表作から十六篇が収められ、書名となった「北山十八間戸」は、「現代詩手帖」平成二十七年一月号に掲載…

『無名鬼の妻』

平成二九年三月二十日、山口弘子著『無名鬼の妻』が作品社より上梓された。無名鬼の妻とは、いうまでもなく自刃した村上 一郎の妻、栄美子である。村上の死から七年後、栄美子は請われて再婚し村上の家を離れた。以来、長谷えみ子とし て人形作家の道を歩み…